Danger Day.3 「勃発!ハンター渕上 VS ジョーカー水樹!」


先に言っておきますけど、映画のコラボでよくあるVSなので勝ち負けはありません

 

こんにちは、もでーんです。

 

渕上さんのバレンタインハンターと水樹奈々さんのMARIA&JOKERを比較してみて欲しい。」というリクエストを貰ったので、自身の勉強も兼ねて、渕上さん第3回にして3回目の登場です。(好きすぎだろおい)

 

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綺麗目のいつもとはちょっと違って配色が温かいジャケット

今回は水樹奈々さんも扱っていきますが、僕は水樹奈々さんという人物にちょっと疎いので、生温かい目で読んで貰えればと思います。

それでは早速比較に移っていく…前に、まずは水樹さんにも触れておかねばならないでしょう。

 

 

 

水樹奈々とは?

声優アーティストの頂点に君臨する者。

 

2009年に発売した7thアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で声優として初めてオリコンのウィークリーチャート1位を記録しました。(奈々さんが7つ目のアルバムで1位。やっぱ持ってますね。)

 

元々演歌歌手を目指していたそうで、そこで培われた歌唱力はとても高く、アニソン界のみならず日本の音楽シーンにおいても屈指のボーカリストとして日に日に存在感を強めています。

代表曲「ETERNAL BLAZE」「深愛」などクオリティの高い楽曲が多数ある上、東京ドームでの単独公演を成功させるなど、富、名声、力、を欲しいままにしている「女王」とも言える存在です。

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因みに僕は「深愛」が狂おしいほど好きで、発売から11年経った今でもよく聴いています。2018年の5月、渕上さんの1stライブでカバーを聴いたときはいたく感動してしまいました。

 

 渕上舞さんの経歴に関しては

Danger Day.1「渕上 舞(声優)」 - もでーんのDanger Daysで触れているのでそちらを参照するようお願いします。

 

開戦!渕上舞 VS 水樹奈々

 

 

今回比較するのは上記の通り、渕上舞さんの「バレンタイン・ハンター」と水樹奈々さんの「MARIA&JOKER」です。2曲の考察なので、今回は少しあっさり目にしたいと思います。

 

まずはいつも通り、曲を聴いてみてください。

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水樹奈々さんの「MARIA&JOKER」はYoutubeで公式動画がなかったので、サブスク等で探すようお願いします。

 

 共にジャズ風のロック

 

サッと聴いて思ったのが「両方ともジャズテイストのロックだな」です。

僕にリクエストして下さった方も、両曲に含まれるジャジィな雰囲気を感じ取り「似ているテイストだけど、違うところはどこだろう」と思ってして下さったのかも知れません。

 

両曲とも、ドラム、ベース、ピアノ、金管+αと、何とな~くジャズっぽい風味があります。ただ、そこで僕がロックという理由は何か。それは「リズムの取り方がロックのそれだから」です。

 

ロックのリズムは一般的に「スネアとバス」で取ります。

 

バスは大体どの曲にも使われている、ドラムという楽器の中で中央の低音を鳴らしている「ドッドッドッドッ」というものです。スネアに関しては、このブログを読んでいる方には御馴染みですね。まだ読んでいない方は、こちらからどうぞ

Danger Day.2 「Rainbow Planet:渕上 舞」 - もでーんのDanger Days

 

下の図は「Rainbow Planet」のものではありますが、ドラムの配置の参考に置いときますね。

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まさかの使い回し

では、ここで2曲を聴きながらリズムを取ってみてください。バスとスネアに合わせて身体は動きませんか?

もっと言えば、頭の中でスネアとバス以外のドラムを消してみてください。それでもリズムを取るのに苦労はしないはずです。

これはリズムの核となる部分がスネアとバスでしっかりと作られている証明に他なりません。そしてこのようなリズムの取り方はロックでよく使われています。

 

それに対して、ジャズはハイハットとライドシンバル」でリズムを取ります。

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この曲は僕が好きなケニー・バレルというジャズギタリストの名曲「Midnight Blue」です。ちょっと右側の「チチン・チチン」と「ン・チャ・ン・チャ」というリズムを取る金属の音が聴こえるでしょうか。この「チチン」がライドシンバルで「チャ」がハイハットになります。

 

はい、ではここでもう一度リズムを取ってください。さっきと違ってライドとハイハットに合わせて身体は動きませんか?ちょっと跳ねるような。

これがジャズのリズムです。

ライドとハイハットでのリズムによって、ロックでは入れずらいタイミングでアクセント(クラッシュシンバル等)を入れやすくなったりするのですが、それは今言及すると長くなるので、興味がある方は調べてみてください。

 

ということで、以上の点からこの2曲は「ジャズ風のロック曲」と言えるかと思います。

 

 

はい次ぃ!

 

2曲の違うところ

 

じゃあこの2曲の違いは何よ?って話です。ざっくり言うとアレンジの方向性だと思っています。言葉にしてしまうと「そりゃそうだ」ってなってしまうんですけど。

 

音楽を聴いたとき、僕たちの中に湧き出てくる気持ちは「カッコいい」「綺麗」「可愛い」「楽しい」「怖い」などですよね。

僕は上記2曲を聴いたとき、「MARIA&JOKERはセクシー」「バレンタイン・ハンターはキュート」と感じました。

 

「まぁ、渕上さんの声って可愛いし、水樹さんの声は艶があるし。」

 

って思う方がいるかも知れません。もちろんそれもありますが、それだけではないと僕は考えています。

試しにバレンタイン・ハンターのオフボーカル版を持っている方は聴いてみてください。

恐らく「うん、やっぱ可愛い」となると思います。

 

「ボーカルがないのに、何故可愛いの?」

 

答えは単純です。アレンジが可愛いからです。

 

ハンター VS ジョーカー:アレンジ音色編

 

両曲に共通する基本的な楽器構成は、ドラム、ベース、ピアノ、トランペットです。

この構成に

 

「バレンタイン・ハンター」の場合はエレキギターシンセサイザー

 

「MARIA & JOKER」にはヴァイオリンとフルートが追加されます。

ポケモンの○○版、××版のような…?)

 

 

 「バレンタイン・ハンター」は半音階進行の不思議な響きのピアノのリフ(その曲を印象付けるフレーズ)から始まり、テンポが速く力強い4つ打ちドラム(下記のリズム編で説明)が入り、それにアクセントを合わせながら、踊るように動き回るベースが印象的です。

そして、ボーカルの裏を取って鳴るトランペットとチャカチャカとノリノリなカッティングギター(1音1音を伸ばさずに、歯切れのいい音を出す奏法)がビートに乗り、サビでは中央と右側にシンセサイザーがボーカルをなぞるように入ってきています

 

僕は今回「バレンタイン・ハンター」と「MARIA & JOKER」との一番の違いはここなんじゃないかと思っています。

 

上記の通り、2曲の構成の違いは「エレキギターシンセサイザーか、ヴァイオリンとフルートか」です。

 

前回の記事Danger Day.2 「Rainbow Planet:渕上 舞」 - もでーんのDanger Days

では、スネアの音から、音色が与える印象の違いについて触れました。今回もそれは重要な項目になってきます。

 

じゃあハンターとジョーカーの楽器の主にどういったところが違うのか、ということですが、それは「エレクトリカルな音」か「ナチュラルな音か」というところです。

 

両曲を聴き比べると「バレンタイン・ハンター」は「MARIA & JOKER」に比べて電子的な印象を受けます。実はここがポイントなんです。

 

電子的な音を使った曲…。皆さんも今まで聴いてきた曲をイメージしてみてください。もし思い当たる曲がなかった場合は、あの有名な「夢の国のパレード」で使われているエレクトリカルな曲を思い浮かべてください

また、渕上さんで言えば「フラミンゴディスコ」なども充分エレクトリカルですね。

(エレクトリカルという言葉を連発しすぎてゲシュタルト崩壊しそう…)

 

皆さんはそれらを聴いて、どのような印象を受けるでしょうか。

恐らく「可愛い」とか「賑やか」とか、そのような印象を受けるんじゃないかと思います。

 

そうなんです。電子的な音って可愛かったり賑やかなポップ曲に使われることが多いんです。勿論、音によってはカッコいい曲にも使われますが「バレンタイン・ハンター」のサビの「テッテッテッテレッレー」といった右側の電子音は、特にポップな曲に使われていることが多いです。

 

「バレンタイン・ハンター」は歌詞を読む限り、曲を可愛い方面に持っていきたそうにしてます。もしかしたら、恋愛の曲なので、ジャズテイストの持つ「大人っぽさ」を匂わせつつ、可愛い成分を全面に押し出していこうとしたのかも知れないですね。渕上さんのポップ曲の可愛い声によくあった編曲だと思います。

 

対して「MARIA&JOKER」はどうでしょうか。

 

とにかくセクシー。ルパン三世峰不二子が主人公のスピンオフ作品があれば、それの主題歌に使われていそうなくらい。

こちらには共通の楽器構成に加えてヴァイオリンとフルートが入っていますが、これに起因する生っぽさが、この曲の艶っぽさに繋がっていると僕は考えています。

 

 

何かライブに参加したことがある方は分かるかも知れませんが、生音というのは楽曲に奥行きを与え、自分もそこ居るかのような空気感を演出します。

 

 

「バレンタイン・ハンター」に比べて「MARIA&JOKER」は、ボーカル以外のパートがちょっと遠くに感じませんか?リスナーが曲の中に入っていける空間があるというか。

それが曲の持つ空気感です。

 

以前各パートの配置について書きました。その時は音の高低についてのみ言及していますが、実は配置は上下左右だけでなく、前後にもあるのです。

ヴァイオリンやフルート、トランペットにベース・ドラム、殆どのパートがボーカルの後ろに配置されています。

これは音量差に加え、リバーブ(ホール内等での残響を人工的に加えるもの)・ディレイ(山びこのように反射して返ってくる音を追加するもの)といったエフェクトという音響効果によるもので、これによって「水樹さんの後ろにバックバンドが控えている様子」を演出しているのです。

 

夜のアンダーグラウンドながら煌びやかな世界にリスナー自身が入り込んでしまったかのような空気感。これが「MARIA&JOKER」、そしてこの曲におけるアダルティ水樹の根幹ではないかと思っています。

 

因みに、最近のトレンドではEDMの流行を受けてか、音を近くに置き、音圧を稼いで迫力と音のクリアさを強調するのが多くなってきています。

EDMではないですが、参考までに僕の好きな曲を一つ。

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僕はラブライブはよく知らないのですが「青空Jumping Heart」の持つ強烈なポップセンスは大好きです。全体的に低音域よりも高音を強調した音でキラキラとした印象を与えています。また、どの音もとても近く、圧縮されたような雰囲気があるため、迫力もあるように感じます。(ただ、この音圧の稼ぎ方は、リスナーの音楽を聴く環境も考慮してやっている部分もありそうなので、完全に迫力のためというわけではないかもしれません。)

 

ともあれ、これを聴くと「バレンタイン・ハンター」と比べても更に音が近く「キラキラで可愛い」に特化したアイドルポップの音になっていることが分かりますね。

 

また話が脱線しました。

以上のことから「MARIA&JOKER」は水樹さんの艶のある声を活かすためのアレンジ(厳密にはミックス、マスタリングと言いますが…)がしっかりとされていることが読み取れます。

 

音の配置一つをとっても、このように一つ一つ狙いがあるわけです。

 

音楽って面白い世界ですよね(それ故に沼が深い…)

 

 

はい次ぃ!

 

ハンターVSジョーカー:リズム編

 

くそぅ、全然終わんないじゃん…。あっさりにするって言ったのに。

 

ということでリズム編です。「結局2曲ともロック」という話は先ほどしましたが、それでも両曲に明確な違いはいくつもあります。

 

まずはドラムフレーズの作り方。

バレンタイン・ハンター」は「ドッドッドッドッ」と拍に合わせて勢いよくバスを鳴らしています。これを4つ打ちドラム」と言います。これによりしっかりとビートを刻むが出来、安定感を出すことが出来ます。

ブレーキをかけるフレーズが無く、リズムによる音の揺れがないので曲が平面的になることもありますが、疾走感を強調するのに適したリズムパターンです

(ロックバンド「KANA-BOON」の「シルエット」などでも御馴染みです。)

 

「恋するレディたちよ!いったれー!」という今回の渕上さんにはぴったりのドラムですね。

 

そしてMARIA&JOKERですが、こちらは場面ごとにドラムのパターンを変えています。Aメロ、Bメロでは少し跳ねるようなアクセントで8ビートを刻み、サビでは「ズッタンズッタンズッタンズッタン」と勢いづきます。ブレイク(音を止めたり、特徴的なフレーズでアクセントをつけること)も場面場面でしっかりと挟み、情緒的な仕上がりとなってます。ストップ&ゴーによりメリハリのある印象を与えられるフレーズのため、水樹さんの「音の立ち上がりが早くリズムに敏感なボーカル」によく合っています。

 

ベースに関しては両曲とも「ウォーキングベース」のようなフレーズを取り入れています。

ウォーキングベースとは、各コードの基本となる基音(ルート音といいます)だけでなく、様々な音を入れていくベースフレーズのことを言います。

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この動画のベースがウォーキングベースの基本形です。

これを基調としたようなフレージングをしているため、身体を揺らしたくなるようなちょっとオシャレな雰囲気を作ることが出来ます。

 

そしてドラムとベースの音色。

もしかしたら、もうお気づきかも知れませんが、これも2曲で全く違います。

「バレンタイン・ハンター」は少しペタッとしつつも分厚い「デジタルサウンドで「MARIA&JOKER」は、分厚さではデジタルに敵わないものの、抜けが良く解放感のある「生のサウンドになっています。

これもまた、アレンジの方向性に合わせてよりよい曲にするための工夫の一つですね。

 

ただ、これは「この音が絶対だ」というわけではないです。今回デジタルサウンドのドラムやベースも、ライブになれば、恐らく生楽器の演奏になるでしょうし、別の楽器を入れてきてもおかしくはありません。

なんなら、渕上さん2nd liveの「フラミンゴディスコ」のように、曲自体をガラっと変えてくるかも知れません。(あれは衝撃的でした)

それを自分なりに解釈するのも、音楽の楽しみの一つだと思います。

 

 

このように、何百、何千、何万という音色の組み合わせから、たった一つの音を探し出す全国のアレンジャーさんたちは、僕たちリスナーがあまり意識しない部分にもしっかりと目を配り、職人としての仕事をしています。

もうアレンジャーさんに足を向けて寝られませんね。(あれ?アレンジャーさんどっちだ?)

 

 

結果発表

結果発表といっても、勝敗はつかないです。だってどっちも良い曲なんだもの

 

大きくまとめると、2曲ともジャズテイストを含んだロック曲で、その中で渕上さんは可愛い方面を伸ばし、水樹さんはカッコいい方面を伸ばすアレンジをしていったというところです。

「音楽には正解はなく、作り手の方針によっていくらでも膨らんで、いくらでも魅力的になっていく。」という音楽の面白さを知って貰えれば書いた甲斐はあったかなと思います。

 

また、ボーカルや歌詞に関しては比較よりも、それぞれの曲を取り上げたときに掘り下げた方が良さそうだったので、今回は敢えて書きませんでした。

 

では、いつも通りまとめる気のないまとめですが、これだけは言わせてください。

 

渕上舞さん水樹奈々さん

          コラボ曲待ってます