Danger Day.6「渕上舞:次は星の海渡ろう~Journey & My music~」

次は星の海らしいですよ

 

こんにちは、もでーんです。

2021年1月27日に渕上舞さんの2ndアルバム「星空」が発売されますね。

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スタッフみんなで次のアルバムのタイトルをウンウン言いながら考えていたのに、渕上先生の「え、星空じゃないんですか?」の一言で一瞬で会議終わったと。

 

先生いわく「ミニアルバム(Journey & my music)の最後の曲で次は星の海渡ろうって言ってるんだから、そりゃあそうでしょう。」とのことだそうです。

 

そりゃあ納得だ!異論はあるめぇよ

 

ということで、今回はそのアルバムタイトルの基になった「Journey」を復習がてら書いていきたいと思います。

 

 

Journey & My music

「Journey」は2019年1月23日に発売された1stミニアルバム「Journey & My music」の大トリを飾る曲として収録されています。

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リリースの発表があった当初は驚きました。

2018年1月にデビューしてから、まず1stフルアルバムが1stシングルより先に、しかもノンタイアップでリリースされ、それを追うように2枚のシングルが発売されました。

当然次はもう1~2曲シングルを出して、それを含めたアルバムを出してくるものと思っていたので「全曲新曲!シングル曲一切なし!」と知ったときは

 

「この人ロック過ぎるぅ!」

 

と叫びました。

いや…しないじゃん、普通…。

「Rainbow Planet」と「リベラシオン」が概ね好評で「この2曲に少し足してアルバム出せば売れるんじゃねぇの!」なんて思ってたので、僕としては「何故そうなる!」って感じでした(笑)

しかし…

 

結果から言えば大正解(爆笑)

 

リリースされてみれば「おい、なんだなんだ名盤じゃん、笑いが止まらん」と。

6曲と数は少なめですが、その分ギュッと詰まったアルバムになってます。

自分の勝手なイメージですが、このアルバムは

1曲目の「My music」で始まりの国を鳥が飛んでいるようなインストで冒険の始まりを思わせ、次のリードトラック「BLACK CAT」で加速し夜の国へ、「雪に咲く花。蜃気楼。(これも超名曲)」で雪に埋もれた国、「ファインダー」で少し牧歌的なのんびりした国へ、「バレンシアガール」で灼熱の国を経由し、そして「Journey」で故郷に帰ってきて、次の旅を思いながら眠りにつく…

そんなストーリーがあるように思います。

 

それを見事な緩急で鮮やかに表現したのが「Journey & My music」。無理にシングル曲を入れなかったので、流れが止まることなくまとまった印象です。

 

意表を突かれた形でリリース(そういうところが好き)されましたが、最終的に他アーティストを含めた自分が今まで聴いてきたアルバム群の中でもトップグループに入る程のお気に入りの1枚となっています。

 

終わりが見えないのでアルバム紹介はここで切り上げますが、少しでも興味を持ったらYoutubeの公式チャンネルにもアップされているので、そちらで視聴してみてください。

 

はい次ぃ!

 

 

考察:サウンド

 最初に思ったのが「空間を感じるなぁ」でした。そして

「とにかくボーカルが気持ちいい」

「Rainbow Planet」「Crossing Road」等、記事にしてきたのはいずれも音が詰め込まれていて迫力を感じるものでした。しかし、今回は浮遊感、どこか夢を見ながらまどろんでいるような印象を受けます。

では何故、そのような印象を受けるのでしょうか。僕なりに考察していきたいと思います。

 

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今回の波形

 

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こちらがRainbow Planetの波形

その理由はズバリ「とにかくボーカルを邪魔しないアレンジになっている」からだと考えています。 渕上さんの声が上下左右、かなり奥まで追うことが出来ます。。

 

波形を見てみると、低音部が少し弱め(低音部のピアノを弾いたタイミングではしっかり鳴ってますが)で中音から高音にかけてギザギザしているように見えます。

これは渕上さんのボーカルを存分に聴かせるためなのか、空間を確保するためにベースを極力抑え、音域を支配しない音を重ねてアンサンブルを作っていることに起因すると僕は思っています。

 

どういうことかと言いますと…

今回はヴァイオリン等の「The 楽器」ではなく、効果音のような音が多く使われています

イントロでは鳥のさえずりが聞こえたり、Aメロでは水のような音が聴こえたり、「ひゅわーん」とした光を感じさせる音が入っていたりと、とにかく情景を思い浮かべさせるアレンジがなされています。

 そのせいか、ある種、打音のような音が重なっており、各パートの音量のピークが入れ替わりで訪れるので波形もギザギザになっているのではないかと思います。

 

では何故そのようなアレンジにしたのか。それは残響を感じさせるような音を使って空間を作り、ボーカルがその中で響き渡るような印象を与えたかったのではないかと僕は考えています。

この曲は各パートの多くに「リバーブ」や「ディレイ」と呼ばれるエフェクトをかけています。(空間系エフェクトと言ったりもします)

「リバーブ」というのは広いホールで声を出したときのような音を加えるエフェクトで、

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「ディレイ」というのは山びこのような跳ね返ってきた音を加えるエフェクトになります。

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上記の2つのエフェクトは空間を感じさせる場面でよくある現象ですよね。それを疑似的に追加して「Journey」の奥行きがある空気感を作り出しているわけです。

そして打音というのは、ヴァイオリン等と違って「一度鳴ってしまえばすぐに音量が減衰していく」ので、印象だけ残して、その余韻の中でボーカルを他の楽器と被らせずに響かせることが出来るのです。

今まで紹介した曲は「アンサンブルの中に一定の場所を空けて、ボーカルをそこに埋め込んだ」ようなものでしたが、今回は「雨が大地に染みこんでいくように、ボーカルをアンサンブルに染み込ませていった」楽曲になっているのですね。(平たく言えば、他の楽器も際立たせているか、そうでないか)

 

通りで気持ちいいわけだ!

 

…しかし、残響音というは諸刃の剣です。

空間を感じさせたいからと言って、残響音を残し過ぎると、新しく鳴った音が重なってどんどん積み上げられていってしまうため、下手をすると音が濁り、不快な響きになってしまいます。

持っている人は3rdシングル「Love Summer」に付いている「Journey-2nd live音源-」を聴いてみてください。アルバム版よりちょっとボワボワしているような気がしませんか?

これは「ライブ会場そのものの残響も拾ってしまっている状態」なので、ちょっと音が整理しきれていない印象(ライブでは音のバランスも違いますし、録音環境上当然のことではあるので、そこを念頭に置く必要はあります)を受けるかと思います。(ただ、ライブ音源としてはかなりクリアなものが録音出来ているので、バランスの違いに注目して聴くのも面白いと思います。)

 残響音の処理を誤ると、CD音源でもそうなってしまうわけです。

 

特に低音域となると、高音以上に不協和音の不快さが際立つので、楽曲のバランスを大きく崩してしまうことになります。

 

じゃあどうするのか?

 

それがこの項で最初に言った「ベースが抑えめになっている」というところに繋がってきます。

 

ベースという楽器は低音を支える大事な存在です。低音がなければイマイチ楽曲に厚みが出ず、ペラペラした印象になってしまいます。

しかし、ベースはただ鳴らせば良いというわけではなく、低音が強すぎると他の楽器の邪魔をしてしまい全体が曇ったような響きになってしまうため、ある意味一番気を遣う楽器だったりします。

そのベース特有の音の厚みは、「Journey」のあの浮遊感を出すには、他の音域を埋めてどっしりとさせてしまうため、適さない可能性があります。

かと言って、ベースを蔑ろにしてしまっては薄っぺらい曲になってしまう…

そこで、アレンジャーはメインの低音部をドラムのバスとピアノに任せ、それらの楽器の「打音であるために音量を維持できない」という欠点を補うような形で、ベースを軽く重ねて鳴らすようにしたのではないかと思います。(机をノックすると「コンッ」ってなってすぐ消えてしまいますが、ゴムを伸ばして弾くと「ビィーン」ってある程度持続しますよね。厳密には楽器によりますが、そんなイメージです)

 

ちょっとしたトリビアになりますが、人間は音色の大部分を「音が鳴ったときの立ち上がりの音(アタック音)」で判別しています。なので、明らかに音が違うギターとピアノでも、その最初の部分だけを切り取った音を聴くと判別が難しくなってしまいます。

 

今回はそれを利用して「ピアノ等の後ろで、薄くベースの音を鳴らすことにより、他の音の邪魔をせず、それでいて厚みを維持している。」のではないかと思います。

ピアノやバスドラは減衰していっても、ベースは音量をある程度保つので、耳としてはピアノの音が鳴り響いている印象を受ける、というわけですね。

それに、無理にピアノでその音域をカバーしようとすると、中音以上も釣られて膨れ上がってしまうので、ピンポイントで補強できるという利点もあります。

 

こういったアレンジャーさんたちのテクニックによって、「Journey」の夢の中のような空気感は保たれ、渕上さんが自身の魅力を存分に発揮できるようになったと思われます。

 

僕も趣味で曲を作ることがあり、その度に「ぐっ!音詰込み過ぎて整理出来てない!」「一部の帯域に音集まっちゃってる!」「この残響が邪魔過ぎる…誰だこんなにリバーブかけたのは!俺か!」と四苦八苦しているので、ここまで音を重ねても綺麗に聴こえるというのは本当に感心してしまいます。

 

いやぁ…プロってすごいなぁ…

 

 

考察:ボーカル

今回も匠の技、炸裂してます。 

渕上さんって、歌に関してかなり器用なアーティストだと思うんですよね。

 綺麗な声でも、パワーのある声でも、可愛い声でも歌えると。

 まぁそれは勿論ではあるんですけど、フレーズごとの瞬間的な声質や音量の変化が特にすごいなと。

 

結構揺らすんですよ。音を

 

特に「Journey」なんて素朴な感じの曲なので、素人からすると「素朴に歌えばいいじゃん」って気にもなりますが、どうも渕上さんはそうは思わないようです。

 短いちょっとしたフレーズでも、芯のある声からスッとファルセットに移行したり、わざとらしくない程度に音量を上げ下げしたり、ピタッと発声を止めるところもあればフェードアウトするように優しく音を絞ったり、最後の一瞬だけビブラートしたり、と色んな技を披露してくれます。

 

僕なんかは特に1番Bメロの「さまよい続(つづぅ)けるう~」のところがお気に入りです。

「さまよい」でスーっと入ってきて「つづ」で瞬間的に厚くし、「ぅ」でもう既に力を抜き、「ける」でフェードインするように声に力を持たせ、「う~」で短いながらも軽く、でもしっかりビブラートを入れる。

この渕上舞というアーティストの技がギュッと詰まった」ような感じが好きですね。こういった技をデビュー1年で出来てしまうのも、声を生業として10年磨いてきたものの賜物なのではないかなぁと思います。

つまるところ

 

歌い方がペタッとしてないから、聴いていて楽しいよね

 

ってことです。

そして普段は他の楽器と被らないように音のレンジを狭めてあるボーカルですが、この曲に関しては空間系エフェクトでどこまでも飛ばしていきます。

空間のあらゆるところへ渕上舞が染み込んでいき、包まれるような、そんな感覚にさせてくれます。

 

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舞浜公演での「おはようの合図」も思えばそんな感じだったなぁ

器用な渕上さんの良いところが沢山詰まっているこの曲。聴けば聴くほど味わいが増していくと思います。

皆さんも、自分なりの「ここが好き!」を探してみてはいかがでしょうか。この曲なら必ず応えてくれるのではないかと思っています。

 

 

ハイ、次ぃ!

 

考察:歌詞

※ 最早考察ではないということに書いてから気付きました。それでもよければどうぞ

 

「正直な歌詞だなぁ~」

と思わず呟いてしまいました。

Aメロ、Bメロでは過去の自分のスタンスや、それを踏まえて今はどうなのかを綴り、サビは「これからどうしたいのか」を中心に歌っているのかな、と思います。

 

「Fly High Myway!」なんかでもそうですが、渕上さんが歌詞を書くと結構「夢や希望も実は持ってた。けど今まではそれに向かうことを怖がってた。でもこれからは違う。怖いのは変わらないけど、今を楽しんで、もっとこの先を見てみたい。」といった想いを切り取って書いていることが多い気がしますね。

 

僕は渕上さんのことを主に音楽活動を通してしか知らないので、そこからの推察になりますが、本質的に渕上さんは「感受性が豊かであるが故にネガティブ気味」なように感じられるところがあります。

しかし、そのネガティブをこれまで積み上げた努力や実績で克服しつつあり、それを形にして残すプロジェクト、それが「アーティストとしての渕上舞なのではないかなぁって気がするんです。

 

「克服しつつある」という言い方をしたのは、恐らく渕上さんはまだ戦っている最中なのだと思ったからです。

これまでの曲にも「気の向くまま行くから急かさないでよ」だったり「人生は楽しまなくちゃ」といった「自分自身にも言い聞かせているような」内容の曲が度々登場しています。(というか音楽活動全体的にそんなような雰囲気を感じます)

 

生まれ変わりつつある自分をしっかりと形にするため、今まで積み上げて熟成したものをアウトプットしているのではないでしょうか。

 

だからこそまだ旅の途中で「一休みしたら次は星の海渡ろう」に繋がるのではないかと思います。

 

そこに僕は惹かれます。

他人からは充分成功しているように見える渕上さん。しかし、本人は自身を成功者とは思ってないんだと思います。(「まぁ、自分なりに必死こいてやって来ましたよ」くらい?)

でも、どこまで行っても挑戦者である彼女が勇気を出して紡いだ言葉だからこそ「信じてみてもいいかな」と思わせてくれるのではないでしょうか。

 

普段前向きな歌詞の曲を聴くと「ふーん」で終わってしまう僕ですが、「Journey」の「またこの青空を思い出して欲しい」なら「ああそうか、忘れがちだけど青空はいつでもそこあるんだなぁ。」と素直に受け取ることが出来ます。

(青空から見下ろされて「こっち来いよ!」って言われても「は?いけねぇわ」ってなりますけど、「見て見て!青空があるよ」って言われたら「よぉし!行ってみるか」ってなる、みたいな…)

 

そういう「一緒に青空に憧れることが出来る存在」渕上舞というアーティストなのではないかなぁと思います。

 

だいぶ話が逸れてしまいましたね(締め方がわからない…)

 

詰まるところ、まぁ、なんだ、その…

 

そういうことだ

 

まとめ

今まで以上にまとまりのない内容ですが、思ったことをある程度書けたのでちょっとスッキリしました。

要するに「Journey」は「今までこれこれこうだったけど、今はこれからが楽しみ。まだまだ旅の途中だよ。」という曲だったのではないかと思います。

 

 アルバム「Journey & My music」の旅から2年経った今、次はどのような景色を見せてくれるか楽しみで仕方ありません。

 

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去年京都で買った扇子が星空モチーフであることをさっき思い出してテンション上がった

 

では次は星空でお会いしましょう。

 

アディオス!